| 「人権条例」のどこが問題? 1 鳥取県弁護士会の反対声明より |
この条例は本当に必要なのか? いろんな人がいろんな視点で問題点を指摘しています。
鳥取弁護士会からの反対声明
この条例(案)には鳥取県弁護士会が反対声明を出しました。
弁護士会が指摘したのは、
(1)是正の勧告をし、従わない場合は氏名を含め公表をする―刑事罰に匹敵する制裁
(2)調査協力拒否の場合、5万円以下の過料を科す―刑事罰に匹敵する制裁
(3)反対尋問権などが与えられておらず、刑事被疑者にすら認められている人権が保障されていない―憲法31条などに違反
(4)人権擁護制度が逆に国民の基本的人権を制約する―構造的かつ致命的な欠陥
この(1)(2)(3)、実はつながりがあります。
この条例では、知事が任命する人権委員が救済の申し立てを受けて調査、助言、啓発をすることになっています。
条例の18条19条「調査」には
第19条
委員会は、前条に規定する調査に関し必要があると認めるときは、当該調査に係る事案に関係する者に対して、事情の聴取、質問、説明、資料又は情報の提供その他の必要な協力を求めることができる。
2 前項の規定による協力の要請を受けた調査に係る事案の当事者は、法令で特段の定めがある場合その他正当な理由がある場合を除き、当該調査に協力しなければならない。
「法令で特段の定めがある場合その他正当な理由がある場合」と言うのは、たとえばお医者さんや弁護士さんの「守秘義務」を指します。
一般人に守秘義務はありませんので、ほとんどの人は委員会の調査に協力しなきゃならないということです。
その上で条例28条を読むと
第28条
2 正当な理由なく第19条第2項の規定に違反して調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、5万円以下の過料に処する。
……どうでしょう。5万円を取るか、洗いざらい調べられるのを取るか。
調査の結果、人権侵害が行われたと委員会が認めた場合「救済措置」がとられます。
第21条
委員会は、第18条に規定する調査の結果に基づき、人権侵害による被害を救済し、又は予防するため必要があると認めるときは、次に掲げる措置を講ずるものとする。
(1) 人権侵害の被害を受け、又は受けるおそれのある者及びその関係者(以下「被害者等」という。)に対し、必要な助言、関係公的機関又は関係民間団体等の紹介、あっせんその他の援助をすること。
(2) 人権侵害を行い、若しくは行うおそれのある者又はこれを助長し、若しくは誘発する行為を行う者及びその関係者(以下「加害者等」という。)に対し、当該行為に関する説示、人権尊重の理念に関する啓発その他の指導をすること。
委員会が人権侵害を救済し予防する必要があると認めたら、被害者に助言がおこなわれます。関係公的機関や民間の団体も紹介してくれるらしいです。加害者には「説示、啓発」がおこなわれます。このようなことを救済措置といいます。
まだ施行前ですのでその救済措置(とくに「説示、啓発」)の詳しい内容は分かりませんが、人権侵害をする「おそれがある」だけでどこかに呼び出されてお説教されてしまうかもしれません。
そして救済措置をしても駄目な場合は、是正勧告もされます。
是正勧告については24条。
第24条
(1) 加害者等に対し当該人権侵害をやめ、又はこれと同様の行為を将来行わないよう勧告すること。
(2) 加害者等に対し人権啓発に関する研修等への参加を勧奨すること。
2 前項第1号に掲げる勧告を受けたときは、当該加害者等は、委員会に対し、当該勧告に関して行った措置を報告しなければならない。
3 委員会は、第1項第1号に掲げる勧告を行ったにもかかわらず、当該加害者等が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
もうやっちゃいけませんよ、って約束したのにまたやったり、研修会に行ってねっていったのに行かなかったら、氏名の公表です。確かに、差別する事は許されませんし、明らかに人権侵害をしたのであれば反省するべきでしょう。しかしもしそれが、訴えた側の言いがかりや思い込みだったら?
氏名の公表は実際に犯罪を犯した場合と同じくらいの、厳しい罰といえるでしょう。なのにこの条例の中には、裁判を受けることも弁護士をつけて弁明する保証もなにも書かれていません。
なので県弁護士会は憲法第32条(裁判を受ける権利)と憲法第37条(弁護士をつける権利)に違反していると指摘しているのです。
(4)人権擁護制度が逆に国民の基本的人権を制約する―構造的かつ致命的な欠陥
というのは、この条例全般に渡ることなのですが、主に憲法第21条(表現の自由)に違反しており、致命的な欠陥であると県弁護士会は指摘しているのです。
さて、県弁護士会が指摘している問題点は以上ですが、実はまだまだ問題点があるんです。